BELDENは1902年から操業している息の長い会社です。ある意味アメリカを代表する電線専業メーカーと言えます。今日の日本の若い子にもギターシールドなどでベルデンの名前は浸透していると思います。
実際、私もベルデンの大昔のシールドコードをギター用に使っています。何と絶縁体は紙なのです。素晴らしい音がします。そんなベルデンですが私の好きなBeldenの年代は1950年を中心として古くは1920年代、新しくても1960年代ぐらいまでを好みとしています。
今回、ご紹介するBELDENはスプールに製造年月日が見当たらないのですがスプールのデザインや線材の仕様から1960年代初期から中期であると推測します。布巻きの絶縁が終わりを迎え新しい合成樹脂の絶縁体に移行する初期の時期の物です。
私はこの時期のビニール絶縁の音質は悪くないなと思っています。無論、布巻きの方がもっと好きですが初期のビニール皮膜の音は決して悪くないのです。これがPVCの時代になると確実に音質はまずい方向に行きますが出た始めの頃の合成樹脂の絶縁体はなかなかいけるのです。
さて今回のBELEDN、型番は8538です。もう入手してからかなりの年月が経ちます。ちょっと小ぶりなスプールでデザインも前の物と微妙に違いますが昔のベルデンのデザインの範疇に入ります。白色のビニール絶縁で太さは0.5mmつまりAWG24です。使いやすい太さで何にでもイージーに使えてしまうサイズです。アンプやエフェクター、ギター内部、オーディオ機器と使う場所を選びません。これでシンプルなケーブルを自作するのもいいですね。なにしろ音質はなかなかのものですから。
まず初めにオーディオ用途、特にRCAケーブルを作った場合の音質を調べました。作って聞いてみると正にスタンダードな音がします!この場合のスタンダードは基準となれる音だと言う意味です。妙な色付けがなくソースの音がそのまんまする感覚です。中庸な良い音とも言えますが流石ベルデン、それだけで終わりません。中域にガッツがある音なんです。そしてアタック感があります。これはアメリカ製のこの年代のスピーカーにも共通してあるキャラクターですね。
例えばALTECなんかに同じ匂いを感じます。しかしスピーカーではなくワイヤーなので周波数的な制限はスピーカーほどありません。全帯域、上から下まで良く鳴ります。超低域とか超高域を欲張るような物ではなく充実したフルレンジSPという感じです。
超高域は適度にロールオフしていますからギター用途などには初めから使いやすいことが予測されます。それにしてもなかなかの音です。聞き込んでいくうちにこのベルデンが只者で無いことがわかってきました。
どんなソースを聞いてもその音楽が伝えたいテーマがはっきりと提示されるのでストレスを感じませんし、その音楽が持つ持ち味みたいな物もしっかりと感じ取れます。しっかりとダシが出ている感じです。楽器間のセパレーションが良く、それぞれの音の解像度もかなり高いのです。
まとめますとオーディオ用途としては「音のアタック感の表現が優秀で適度なガッツ感がある音質」と言えます。0.5mmで単線なのでとても扱いやすい事も忘れてはなりません。
さてギター内部配線として、ストラトに使用した場合はおおっ!なかなかよい!と言うのがファーストインプレッションでした。耳に痛くないトーンと言うのが実に良く。新品のストラトにありがちな耳障りな要素が回避されます。ややエージングが進んだというか弾き込んだ後の音というかとにかくスムーズです。またある意味切ないストラト特有のいなたい音がビンビンします。そのややダークがかった雰囲気が漂う音は好みですね。クリーントーンの場合、こちらはやや粘ったフロントPUの音もナイス!
LP用としてはどうでしょう。こちらも悪くないのですよ...単線のくせに(笑)普通は単線だとギターに使うにはWEと言えども合いませんからね。ですが例外も最近、ちらほら出てきました。その中の一つですねコレ。何かベルデン本来の良さが出ているような気がします。ベルデンて中音がいいんですよ。これはメーカーのトーンなのかも知れません。オーディオでもギターでも最初はワイドレンジじゃなく中音域が一番大事だった歴史があります。なので当時のそんな要求にBELDEN社は答えていたのかも知れません(あるいは偶然?)。ギターはそんなに重低音も超高音も出ません。大事なのは中域を中心とした低音高音なのです。
で、ST同様、耳に痛くないTONEなんです。PAFって本物は柔らかな良い音しますからね。これがキンキン耳に付くようではダメなんです。それでいてPAF特有のイナタイ音はしっかり出ます。つまりハンバッカーPUの良さを引き出しています。クリーントーンの場合、雰囲気があります、それで立ち上がりは結構素早いのでリアルな感じ。歪ませると更にこのワイヤーの良さが滲み出てきます。
まとめますと、初期のビニール皮膜の優秀さが伝わる一本ですね。勿論、老舗ベルデンなので素性はいいのですが・・(最近のベルデンはこの限りではありません)、この中域に適度なガッツのある音は実に音楽的に味わい深い音です。使用用途は広くアンプ内部配線材やエフェクター配線、AUDIO
CABLEの製作、そしてギター内部配線まで様々な用途に安心して使うことができます。