【217#】Western Electric
1910
幻のスイッチボードワイヤー
20cm = 1850円
☆本商品は1910年頃の最も初期のスイッチボード内部配線ワイヤーです。元は日本の最初の頃のウエスタンマニアの方が秘蔵していた品です。
スイッチボードワイヤーとはスイッチボードつまり電話交換機ですがそれは文字通りスイッチとジャックの塊です。その機械の内部に使用されたものがスイッチボードワイヤーです。
内部は多数の配線ワイヤーがひしめいております。今ならば電話は電波を利用した無線通信ですが、その昔は有線で電話局からお宅の固定電話まで電線が繋がっていたのです。
こんな感じで電話交換局の女性社員が手動で相手先に切り替えていたのです。
凄い時代です。
さてそんな中、WEは電話通信を完璧に行う電線を検討した結果、人の声が誰だか区別できる能力を持たなければ意味がないと考えたのです。そりゃそうです! 叔父さんからの電話の声が会社の上司の声と区別できなかったら騒ぎになる。人の声を明瞭に区別して遠方に届ける能力が必然的に求められた。それがスイッチボード・ワイヤーの使命だ。
ウェスタンだけが初期の電話器製造会社ではない事は皆が知っている。しかし有名で生き残ったブランドなりの理由がある。それは年間予算だ。当時のウェスタンエレクトリック社の年間予算つまり1年で使える金は当時の日本の国家予算に匹敵する。兆の単位だ。これは驚きの事実。今ならアップル社がiphoneで稼いで世界トップの会社規模となっているのに似ているかも。1910年頃と言えば電話の超初期の時代で、その時代の最も古いタイプのスイッチボードワイヤー、それが今回出品するワイヤーです。なお色指定はできません。
TYPE 電話通信用配線材
GRADE 布巻き蝋付
ブラックエナメル単線
SIZE AWG22~AWG23
年代は1910年頃
直径は約0.6mm
テストはHOT側とCOLD(GND)側の両方にこのワイヤーを使用した結果を述べます。
まずAUDIO用の結果をレポートします。
Virgo's Groove ~ Heated Beyoncé RENAISSANCE
まずビヨンセから試聴を始めた。実に気持ちのいい音だ。ねっとりとしながらうねるようなグルーヴが快感のサウンド。ドラムやリズム隊の音が秀逸。ボーカルもいい。これは2025年のソースだがなんと1960年代のブラック・フィーリングが伝わる。これがアメリカン・サウンドの最上級なのかも知れないと思った。何しろ全ての音が無機的にならず有機的で生命感を感じる。
そして全くうるさくないのだ。録音された音自体はそれなりに尖っているのだろうがWEの醸し出すブラック・エナメル・トーンが全ての音をブラッキーにする。黒人のリズムや醸し出すビートを聴いていると日本人とはやはり違うと思ってしまう。日本人はここまでビートやグルーヴを体の中心から揺り動かさない。それは日本的な性格なのだ。私はドラムを叩いていたからわかるのだが日本人のドラムは平面的だ。体が自然に揺れてしまうような内部からの衝動が控えめなのかもしれない。しかしそれではねっとりとうねるようなグルーヴは生まれない。
今時アナログのドラムセットをドラマーに叩いてもらって録音する音源は少ないのかもしれない。80年代にLINN-DRUMが現れてからドラマーは少なからず職を失っていった。いわゆる打ち込み系音楽が世界に浸透していったのだ。体がグルーヴを常に内包する者が打ち込めばたとえ機械でも後乗りやリズムの揺れは表現できる。このアルバムの大半の曲はそんな感じがする。だがこのWE1910を通して聞くと完全に生身の人間が叩いているように変身する。これは凄い事だ。
Orbiting Mats Eilertsen Trio Sails Set
ここでソースをピアノトリオに切り替えてこのワイヤーのハイエンド再現性を検証する。私の記憶の中のこの曲での基準はKelloggなのだが、やはりWEはKelloggとは違う。だがどちらも良い音。ただケロッグの神経質とさえ表現できる精密緻密な音の拾い方をWEはしない。それは何故かというとWEは音の輪郭線の太さがHB以上のBあたりだからだ。ケロッグは2Hとかだ。Bになると音は全て太めに表現される。それでいて繊細さも併存する。2Hのケロッグにはその太さは感じられない。描線のシャープさがそのまま質感となっている。WE1910はケロッグの音を太くしたような音だ。超高域に関してはケロッグの方が優っているがそれは線径の違いも関係する。ケロッグは0.22mmだがWE1910は0.6mmだ。WEの方が高域が少なく低音が出るのは当然と言える。だが逆に考えると0.6mmでこの音が出せるのは信じ難いとも言える。またダイナミズムを感じさせる音でもある。そこはケロッグを超えている。
トラック06 Andre Previn RACHMANINOV 2nd SYMPHONY
何という艶やかで色っぽい音なのか、、クラシックであっても楽器の色気はたっぷり出してほしい。そんな時にこのWE1910が選ばれる。中間色が多く現れる感じのこの曲、WE1910はそれをアナログ盤的に描く、それは正に油絵タッチで写実とはちょっと違う。そこがいいのである。CDの音は冷たいと昔から言われて来たがWE1910を通すだけでガラッとCDの音がアナログレコードに変身する。
Love That Burnes Fleetwood Mac English Rose
この曲での聞きどころは勿論、ピーター・グリーンの弾くレスポールの音だ。枯れているにも程があるという音。これを白人ギタリストが弾いている事自体に驚きを感じる。ある時期のBB・KINGの枯れ切った演奏にインスパイヤーされたに違いないピーターの弾くフレーズは物悲しく哀愁で枯れ切っている。このWE1910を通すだけでピーターの描き出す世界は単に黒人音楽を模倣しているレベルを遥かに超え、更なる高みに到達してしまった。
Rainy Day, Dream Away The Jimi Hendrix Experience Electric Ladyland
ジミのこのアルバムがリアルタイムに発売された頃私は中学生だった。勉学の帰り道、池袋駅北口のドラム屋に寄るのが日課だった。その楽器屋さんにはレコード棚も置いてあって、その中にこのElectric LadylandのLP盤も混ざっていた。当時の外盤のジャケットは全裸の女性が多数写っている刺激的なもので中学生の子供には鼻血ブーものだった。で、この曲の中のストラトのソロ、何この音!である。かっこ良すぎる。これはWE1910のマジックだ。確かにジミはギターを肌身はださずどこでも持っていった。トイレの中でも弾いていた。後日談でマイク・ブルームフールドがジミの事について語る時、その余りのギター好きには半ば呆れた…ように書いている。あのマイクが言っているのである。WE1910が描くジミヘンドリックスの音は我々をあの時代に強烈にワープする。
トラック03 5:50 Juna-Tabor/Apples
まずピアノの音の真実味に驚く。あれこんなにいい音だったっけ?だ。そしてジュナの声が更に凄くリアリズムの次元の高さと声の妖艶さが相乗りし快楽時間のようなものが舞い降りてくる。女性ジャズボーカルにとってWE1910は強い味方だ。
レスポールにWE、合うわきゃねーだろ!と最初思っていた。だがね不思議なことにこれがいいのよ。レスポール特有の音が全方位的に表現されている。つまりトロ味、旨味、粘り、気持ちの良い倍音、ピックを当てた瞬間のあの音…そういうのが全ていい。私はこのWE1910だけは例外的にレスポールにも合うと、今後言い続ける事になると思う。少し具体的に書くと音の甘み、十分にある。アタックのリアル感、これも十分にある。そして粘るようなハムPUの表現、これもいい。そしてチョーキング時の気持ち良さが最高。勿論コード弾きをしても味わい深い音が出る。これ本当に単線なの?と言いたくなる。多分貴方がこの音を目隠しで聴いたとしたら撚線以外は思い浮かばないだろう。特にいいのは力を抜いて弾いた時の何気ないフレーズ。なんだかこれが素晴らしく感動的ですらある。そして抜けの良さ! これである。
レスポールが余りにも良かったのでストラトにも期待した。弾いてみるとこれまた正真正銘のストラト・トーン、それも50~60年代のあの音だ。どちらかと言うとメイプル指板ではなくハカランダ指板の音に近い。スティービィ・レイボーンなんかの音を思い出す。ビンテージ感はかなり深いが枯れきってはなく生命力を旺盛に噴出する音だ。このワイヤーの場合、本物の50~60年代(プリCBS)のストラトでなくても、この音が出せる。これかなりヤバい音なのでストラトのPUのリード線に使ってみたくなった。ストラトのPUのリード線をこれにするだけで50~60年代(プリCBS)のストラトの音が出るなら最高じゃないか♡。
ではテレキャスターではどうか? これが死ぬほど良かった。ストラトに較べると音が少し潰れているというか、そこがテレキャスターの持ち味なのだが、その持ち味が100%開花する。音が気に入らないテレキャスターにこれを付けてみるのは良い改良手段だ。少し具体的に書くとテレキャスターの場合、裏返ったような粘っこいネチネチした音が出るか否かだがWE1910のテレキャスターはヤバい音です。この音はこれまで聴いてきた様々な音の中でも際立っています。WEがテレキャスターに合うなんて誰が想像したでしょ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まとめ
このワイヤーの音質はほぼパーフェクトに近いもの。超初期のスイッチボードワイヤーの面目を賭けた音だ。50年代とは全く違う音だ。この音に超高域成分を微妙に足せばハイエンド用途でもパーフェクトだと個人的に思うが別に足さなくてもいいのかもしれない。当時の電話の伝送帯域と電話機のスピーカーの高域再現限界を考えると全く超高域は要らなかったからだ。人の声が人の声らしく鳴る、これは大事な事なのかもしれない。ウェスタンエレクトリック社がのし上がったのはこのスイッチボードワイヤーからだ。後年のWEのスイッチボードワイヤーとは全く音質が異なる事を覚えておいてほしい。これが本来の音なのだ。今後ウエスタンを語るならばこのワイヤーの音を聴いてからにした方が良さそうです。超初期のWEスイッチボードワイヤーは別次元の音でした。
ギターには驚くほど合っていて、しかもギターの種類も選ばないという寛容さ。そしてそれぞれのギター特有の実に味のある音が出まくります。騙されたと思ってギタリストの方々使ってみてください。
【ご注意】
価格は20cm単位ですが一回の購入での個数上限はx10と致しますので前もってご了承ください。
また全長2.5~2.8mがカット無しの一本つながりの最大の長さなので前もってご了承ください。
それ以上の長さを注文の場合、複数本での納品形体となります。色の指定はできません。
なお、数量を多く注文した場合に商品の性質上、全てが一繋がりで納品できない場合があります事をご了承ください。スイッチボード内部からの配線取り出し形態なのでスプールに綺麗に巻かれた物とは状態が異なります、傷、汚れ等、それに蝋が全体にまぶしてありますので指にベタつきますので神経質な方にはお勧めしません。
数量1(20cm)以上、必要な方はカートに入れる前に数量指定(MAX=10)をして下さい。
支払方法
■銀行振込: 三井住友銀行
■ゆうちょ銀行
■クレジットカード
■コンビニ決済
【発送方法/発送費について】
品物の外形が角形A4サイズ(31.2cm以内×22.8cm)内で厚さが2.5cm(重さ1Kg)までの物でしたらヤマト運輸のネコポスが使えます。
運賃は全国一律200円(無料サービスしています)です。
時間指定はできませんが追跡が可能です。品物はポスト投函です。おおよそ
1~2日でお手元に届きます。
上記以上のサイズ重量の物、そして到着日時の指定をしたい場合は
宅急便コンパクトでの発送となります。