【88#】まるで604 !
*DIVCO ROSIN CORE SOLDER
50cm = 650円
DIVCO(DIVISION COMPANY)の
ROSIN COREのハンダです。
スプール上のデータ
TYPE X25 ROSIN
GRADE 60
SIZE 062
年代 : 1950年代から1960年代
直径 : 1.6mm
アメリカのビンテージソルダーの歴史の中でもDIVCOはかなり短い期間にだけ現れたブランドのような気がします。初期の頃のDIVCOのメタル・スプールのデザインでは明らかにアール・デコの様式を感じさせる直線を基調としたお洒落な物があります。つまり1940年代辺りにその起源がありそうです。
こういったデザインの変化は各メーカーともある程度、似通っておりKESTERなども初期はアール・ヌーボー的な曲線的なロゴやデザイン(1920年代のKESTERデザイン)を見る事ができます。その後1930年代~1940年代には格子のチェック柄のアール・デコ風のデザインが現れ、それらは1950年台入るとほぼ姿を消します。
調べてみると年代的にはアール・デコは「アールヌーボーに続き、20世紀初頭(1910~1930年代)のヨーロッパおよびアメリカで流行した様式がアールデコ」とあります。一方のアールヌーボーは「19世紀末から20世紀初めにかけて、都市化と産業化を背景に、フランスとベルギーを中心に広まった国際的な芸術運動・様式」とあります。
デザイナーがこれいい!と思うデザイン様式は世界で出回るようになってからしばらくして若いデザイナーが取り入れるため当然ながらタイム・ラグがあるのでしょうね。そんな観点からこのDIVCOのデザインを見ると多分1950年代と推定するのが無理のないところです。
ちょっと話が横に逸れますがシンセサイザーの特にメーカーロゴなんかも多分に時代時代の流行デザインを取り入れてまして、それは初期のMOOG、ARP、OBERHEIMなどのメーカー・ロゴにしっかりと現れています。
今回のテストはHOT側とCOLD(GND)側の両方にこのハンダを使用した結果を述べます。当たり前ですが、このやり方は最もハンダそのもののキャラクターを知る方法です。
まずAUDIO用の結果をレポートします。
A Love Boat Supreme Igor Prochazka Trio Easy Route
兄さん兄さん、このベースの音を聞いて下さいよ! と言いたくなるようなウッド・ベースの音。弾む、弾む、弾む事この上ありません。ウッド・ベースの音を聞きたい人にとってこれはもう圧巻!! 敵無しです。
Aqua Marine Isao Suzuki Quartet Blow Up
このコントラ・バスの音を聞いてください! この盤はダイレクト・カッティングが一時期流行ったきっかけの一枚。その生々しい音がこのハンダで蘇ります。コントラバスを弓で弾いている変わり種の曲ですがその音は物凄いものがあります。
Wake Up And Make Love With Me Karen Souza Feat. Renauld Essentials
これがご機嫌なのです! 勿論ベースの音最高っ! 私結構ライブなんかでベースの音が良かったりするとつい演奏後にベーシストの近くに行って「あんた良かったよ! 最高だった♡」と二度ほどやった事がありますがベースって普通目立たないのですよ、ドラムは音量で目立つし歌手はメインですから目だって当然ですが、ベースは普通目立たない、ちなみにB型の人が多いです。
そのベースの音が(演奏は勿論、音ですよ、ベースは音っ!)いいと感じるのは余程の事です。また全ての楽器の音に粘りが付きますからい~い感じになるのです。倍音も出てないようでかなり出ています。それを殊更感じさせない大人の音。一種独特の魅力のある音なのですがそれを言葉で表すのが難しい。難しいが確かに 濃厚にその良さを感じます。
交響曲 第5番 ニ短調 作品47 II-Allegretto Stanisław Skrowaczewski: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra
想像してたよりずっと良くてもう少し細部を鮮明に見たいな~とは思いつつもこのハンダの描き出す世界も捨てたもんじゃないぞと聞き続けるうちに思っている自分が居ます。不思議なハンダだ。全く問題なくクラシックの大編成が聴けます。
Lunch Break: Peak Hour The Moody Blues Days Of Future Passed
出たっ!!! この音は正に京橋周辺にあったテアトル東京で聴いたウェスタン(Western Electric)のスピーカーの壮大な音です。この音はそんな骨董的価値があるのかも知れませんが、とにかくこの音は楽しいに尽きる。子供のように心が踊る。
The Windows Of The World Trijntje Oosterhuis The Look Of Love
オケ物が合います。この曲バート・バカラックの曲をトレンチャが歌っているのですが壮大なオーケストラをバックに歌っています。そのオケが何と言うか大人の音だなぁとしみじみ思うのです。音楽って時代が進むとどんどん軽佻浮薄になって行きますので、このような壮大なオーケストラをバックに歌うのを聞くと大いに反省してしまいます。子供たちはドンパチする音がそもそも好きなのでこのような良さはあと20年経たないとわからないのです。そう思わせる大人の音。
ストラトです。
LPよりもSTの方が断然合っています。ギターに使うならストラトかも知れません。いやストラト一択です。枯れ感もありますがそれよりも細くなりがちなSTの中域が太くなるのがとても気に入りました。レンジが広くないのでSTの音域に丁度いいのかも。これはずっと弾いていられます。
レスポールです。
LPにはやや合わない気がします。と言うのはウッドベースではあれほど中低域が飛び出してきてくれましたが、LPでは飛び出し部分の周波数帯がズレるのかその恩恵に預かれません。しかし弾いているうちにだんだん気持ち良くなって来ました。そういうハンダです。クリーントーンでは歪ませた時よりも結果が良いのですが、そこから歪ませていくとちょっとうるさくなる傾向があります。しかし更に歪ませていくと今度は全く嫌な音が出なくなります。これは不思議です。普通のハンダはちょっと歪ませた位が美味しいポイントなのですが、明らかにこのハンダは両脇に美味しいポイントがズレています。うまく解説はできませんが、とにかくこのハンダはうんと歪ませるか、逆にクリーンが良いです!
まとめ
ある程度の年代のオーディオマニアなら知っていますがALTECの604というスピーカーがあります。年代によって末尾の番号がAから順にB、C、 Dと推移していきますが60年代頃は604Eが有名になります。
私自身604Eの磁力が弱いタイプ(605B)を録音制作のモニター用に永らく使っていました。604は全米のレコード/映画会社のスタジオで標準的なモニタースピーカーとしてかなり長い期間、安定的な地位を築いていたのです。
604の初期モデルの604(Aすら付かない)は再生音域が80Hz~8KHzとされ、ラジオか?と思うほどの再生帯域の狭さですが考えてみると当時は家庭用オーディオを別にするとラジオが全盛でした。カセット・テープもCDもまだ生まれていません。なのでその帯域に当ててモニターするのは当然のことでしょう。しかし80Hz~8KHzと発表されてはいてもそこから先がスパッと切れているのではなく高低両端はダラ下りではあるが出るには出ていたのです。
今のHI-ENDが主に高域や超高域がトレンドだとすると当時50~70年代はズバリ中域の時代だったのです。そうなのです当時のFENから流れるビートルズやらレッド・ツェッペリンやらCCRなどはラジオから流れる音に痺れていました。その現場での原器となった604、ビートルズのスタジオ画像にも当然写っていました。彼等は当時、スタジオ御用達のイギリス製モニタースピーカーの音が気に入らずアメリカ製の604でサウンド・チェックしていたとの事。
604Eがプロの現場で絶大な信頼を得ていたのは音量の如何に関わらず音が崩れたり濁ったりしない事と、とにかく故障が少ない、それが長期に渡って続く頑丈さだったのです。そして再生帯域が広いとは言えないものの、その範囲内では音の密度が非常に高く充実感のある緻密で力に溢れた再生音で、音源の音の細かな変化に恐ろしく敏感である為、マイクアレンジやミキシングの細部の違いが非常に明瞭に聴き分けられる、いわばプロ用モニタースピーカーの鑑だったのです。
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何を言いたいかと申しますと、このDIVCOハンダ、604系の音です。
ハンダで604? ちょっと珍しい気がします。空想ですがDIVCOの社員がハンダの音質をどうするか悩んでいた時にたまたま知り合いに録音関係者か場合によってはALTEC社の人がいたので「ねぇハンダの音質で悩んでいるんだけどどうしたらいいかな?」と尋ねたら、その人が「そりゃ勿論604だよ、あぁいう音にしとけば間違いないよ!」てな話があったりとかなかったりとか・・・まぁ妄想ですが
世の中、耳が高域寄りに突っ立っておりますが、基本は中域です。それは604の音の素晴らしさが証明しています。
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